三途の川の渡し守エフと、現世とあの世の境目を彷徨う者たちとの物語
著者: Q輔
最新: 第16話 賽の河原は晴天なり
時間: 9 月 前
まとめ:
ここは、現世とあの世の境目、賽の河原。 僕は、この河原に建つ「フェリーマンカンパニー」という渡船会社に勤める三途の川の渡し守。 今日も、渡船場から沢山の死者を渡し舟に乗せ、あの世へと渡している。 僕は、エフと呼ばれている。 どうやら僕は6番目にここへ来た渡し守らしい。渡し守A、渡し守B……6番目の僕は、渡し守F。 恐らく、過去には別の名前があったと思われるのだが、まるで思い出せない。何故ここで働いているのか。いつここへ来たのか。何も憶えていないのだ。 気がついたら、ここで働いていた。まったくトホホのホだ。 ちなみに、渡し守の仕事は、実際に船に乗って死者をあの世へ渡す、いわゆる「船頭」ばかりではない。 乗船する死者の受付。死装束や三角頭巾の配布。乗船員数・出船時刻の管理。渡し舟のメンテナンス。などなど。仕事内容は様々。 僕は、数年前から最終決断補助者《ファイナルジャッジヘルパー》という仕事に就いている。 毎日現世とあの世の境目にある賽の河原で働いていると、時折、生者とも死者ともつかぬ、ワンダラーがふらりと訪れる。 ワンダラーが、三途の川を渡るか否かを決める。つまり「生きるか死ぬか」の最終決断をする。そのお手伝いをするのが、僕の仕事。 ファイナルジャッジヘルパーと言えば聞こえはいいが、まあ、事実上現場のトラブル処理係。 ほら、今日もこの賽の河原に、生者とも死者ともつかぬ悲しきワンダラーがやって来た。…続きを読む