僕は、勇者だから
著者: yukisaki koko
最新: 第5話 とある魔女の話
時間: 9 月 前
まとめ:
――金色の髪。金色の瞳。そして始まりの勇者と同じ瞳を中心に真っ赤に爛れる肌。勇者が生まれた。 転生をした。何度目の転生だろうか。 魔王討伐後うっかり足を滑らせ、谷底に落ち、谷底に落ちてくる生物を餌とするビッグマウスなるバカデカい幼虫のような気色の悪い生物に丸呑みされ、もうめんどくさいと思い、うんことして排出されることに抗い続け、頑丈すぎるこの体が消化されるのを待つこと五十七年。ちゃんと数えた。 今に至る。 私は何千、何万回の転生を経て、幾千、幾万の世界を救い、生後三日でのハイハイ、生後一週間での二足歩行を可能にしていた!しかしこんなことで驚いてもらっては困る。幼児経験何年目だと思っている。 腕立てだって、腹筋だって、、、、。 愉快さを取り繕っているうちに、ぽろぽろと、涙が溢れてきた。 勇者はもう限界だった。度重なる転生に代わり映えのない人生。最初から、目の前にはレールがあった。彼は常に勇者だったから。どんな時も。 しかしそれも、じきに終わる。「魔王リィンカーネイションが始まりの勇者様に転生の呪いをかけ殺してから百三十年。やっと生まれた、希望の子」 やっと。やっとだ。やっと、戻ってきた‼ ――無限の旅を超えた勇者は、何を語り、何を成すのか。何を残して、安らかに眠るのか。 勇者に、名前はない。※隔日投稿。小説家になろう、noteにも投稿しています。…続きを読む