現実世界に帰るまで (1/2)

「冬春くんはどこから来たの?」

かぐやとはキスした次の日から一つ屋根の下で一緒に生活している。竹から金などが出てきたこともあって大きな家に住んでいるため、一つ屋根という表現が当たっているかは分からない。

今日はあれから2日目。その朝食の中で使用人などが慌ただしく動いている時に、彼女は解き放った。

「最初に来ていた服って、今まで見たこと無かったんだよね」

がたっという音を最後に、急に物音が全て消え去り静寂の空間がやって来た。

あー、これ皆気になってたんだ。多分、僕が何時までも話さないけど、かぐやと良い雰囲気だから聞けなかったのか。そんな中、かぐやが尋ねたからつい立ち止まったと。

「うーん、説明しにくいんだけどね。端的に言うと別の世界からかな」「別の世界?」「うん。別の日本から。神様に連れて来られたんだ」「そうだったんだ! 神様にも会ってるんだ?」「書物の神様だけどね」「あー、あの神様か!」

何でかぐやに通じてるんだと思ったら、彼女は月の人。別名 天人。神様とのなんらかの繋がりあったとしても不思議ではないか。

「ところでさ、かぐやに求婚した中で、最後まで粘った人が5人いたよね?」「あれ、そうなの?」

失言した。彼女は天人に渡された羽衣で記憶を失っているのだった。分からないことを問うのもなかなか酷だから、ごまかそう。

「ううん、勘違いみたい。 じゃあさ、蓬莱って言葉は知ってる?」「知ってるよ?」「それって実在してるの?」

かぐやにどうしても尋ねてみたかったことの一つだ。恐らく、5人の求婚者の事も知っている翁達も気になっていただろう。

もし存在するとしたら、それは大問題であり大発見となる。

「実在してるし、入口だけはこの星にあるよ。けど、資格を持った人がその真上で呪文みたいなの唱えないと顕れないんだ」「へぇ、僕にはありそう?」「んー、どうだろう。実際に行ってみないとかな」

行けるかは分からないと。でも、実在するというのを知れたのは大きい。男のロマンをこれでもかとくすぐってくる。

龍も存在するんだろうなぁ。男なら誰しもが一度は憧れ、様々に書かれているそれ。実物見てみたい!

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さらに二週間過ぎた。その間、僕はこの物語の生活習慣(主に貴族だけど)を体験することが出来た。世の中にこれを出来るのは僕だけだと断言できる。

僕はただ食卓をかぐやや、翁達と囲むだけではなく、使用人たちに交じって、掃除、料理など雑務もやって来た。最初はなぜやっているのと疑問視していたかぐやも今では一緒に雑務をこなしている。

一緒にいる時間は本当にあっと言う間だった。彼女との仲は大分深まったと思う。

因みに、完全に余談ではあるが、なんと初夜を経験してしまった。この世界では普通らしく、僕たちが恋仲になっているのでしたのだ。その時の彼女の表情は扇情的と言えた。彼女の顔は紅潮し、息を荒げ、耳元に届くそれは言葉に出来ない程、僕の内に潜む獣を呼び覚ました。その時に感じた彼女の躰は、柔らかく、最高だった。それ以外では表現出来ないと思う。