予想外 (1/2)

「すとんっ」

おっ、着いたかな。感覚が戻ってきた。そして、周りには、机、たたんである布団などがいつも通りにある。

戻ってきたんだ。ここを離れ、竹取物語の中にいたのは、あっちでの時間で2週間くらいだったはず。こっちではどれくらいなのかな?

『2時間だよ~』

あ、タケトリ様。そんなに時間経ってないんですね。だいたい、1週間で1時間ですか?

『うん、そんなところ。そうだ、かぐや姫は、君のために、今熱心に言葉覚えてるから待っててね~』『ありがとうございます』

君のためにという部分は明らかに強調されていた。タケトリ様も嫉妬してるのかな。

今ここにはまだかぐやはいない。僕は、完全言語理解があったから通じていたが、彼女の古典的な話し方で会話が成り立つのはいないだろうからとタケトリ様の元で、言語と基礎知識を身に付けている。

「かぐやに早く会いたいよ」

虚空にぶつかって呟いてみた。もう、少しも離れたくない。

『お~い、冬春くん!』『は、はい?』『言い忘れてたけど、帝も来てるからね?』

『はい? 今なんて?』『いや、帝も来てるからね~』『ど、ど、どうしてでしゅか?』

動揺し過ぎた。しゅってかんでしまった。かぐやは永遠の命と代償に来た。じゃあ、帝は何を代償にして来たんだ?

『その疑問に答えよう!』『心を読まれた!?』『仮にも神だぞう? 余裕なのだ! それより、帝はかぐや姫を想う気持ちの強さゆえに、帰還を聞いた瞬間に不死の薬を飲んで、永遠の命と引き換えに来たんだよ~』『そうなんですか…』

『帝の家とかはどうするんですか?』『それは今話そうと思ったんだけど、冬春くんの家に!』

僕の名前が出てきたと同時に、神様を諭すような眼で凝視した。さすがに、睨みつけることなんて出来ないからね。

『うそうそ。嘘だから、そんな目で見ないでよ、新しい何かが目覚めないよ。ひゅ~、危なかった。帝は、天皇家に頼んだから安心して。尋ねられる前に言っておくけど、天皇家は神という存在を知っているからね。だから、帝は東京都に転移! あ、でも、かぐや姫に会いたくて冬春くんの方に行くかもね』

良かった~。帝には絶対に来て欲しくなかった。あの人と仲が悪い訳ではないけど、なんか喧嘩腰だからなぁ。

どっちにしろ、こっちに来る可能性はあると。

帝の天皇家での立場は、どうなるかはこれから判断されるんだろうな。

今は、夜の12時。確か、木曜日だったはずだから明日も学校に行かないとか。予習は、良いかな。明日、凄く休みたいよぅ。

「がらがらがら」「ただいまー」

あ、父さんが帰ってきた。久しぶりに声聞いたなぁ。そうだ、玄関に行ってかぐやの事言わないと。

玄関に向かうと母さんが父さんのコートを受け取っていた。

「おかえり、父さん」「ただいま、冬春はまだ起きてたのか。ん? <ruby><rb>秋夏</rb><rp>(</rp><rt>ときか</rt><rp>)</rp></ruby>は寝たのか?」「寝てるんじゃない?」

秋夏とはもうお気づきの方も多いだろうと思われるが、僕の姉だ。双子の。

ここで容姿に触れておくと、僕は身長は176で顔は父がイケメンなおかげで悪くはないはず。体も鍛えているから、筋肉質だと思う。姉は、160位でかぐやと同じくらいだと思う。顔は、こっちは美形。かぐや姫級と贔屓目抜きで言えると思う。まぁ、ちょっと高嶺の花感が強いけど。体型はスレンダー。あ、でも胸は、Cあるもん。と以前から言っているので信じよう。

「まぁ、秋夏がこの時間帯に起きてることは珍しいからね」

母さんの声も久しぶりだな。僕がこう思っていることを伝えたら不思議がられるのかな。言わないでおいとこう…

そんなことを思っていたら、父が尋ねてきた。

「それで、冬春。かぐやさんの事はいつ言うのかな?」「へっ?」「あ、それ、私も気になるわ」

えっ、何でこの二人はかぐやの話を始めてるんだ?

まだ、かぐやの事なんて口にしたことないはずなのに。そうか、僕が竹取物語を愛読してるのは、内容げ好きなだけでなく、かぐやに淡い恋心を抱いていたからと見抜いていたのだな。そうだな。

「違うよ」

今のタケトリ様の声は頭に直接響くようないつもの感じではなく、目の前にいるかのように感じられた。違う、実際に目の前にいた。