第3話 「生き残ること」と「生きること」は違う (1/2)
「なるほど。【元に戻る】か」
オーガストが焚き火を眺めながらコーヒーメーカーで淹れたての良い香りのする液体を口に運んだ。顔に似合わずミルクと砂糖多めのカフェオレである。
「俺は【怪我と病気をしない身体】と【尽きない兵装弾薬】だ。酷いところと聞いていたからな、まずは生き残ることを優先した。なんとなりゃ雑草でも食うつもりだったがゾッとしねぇな」
そう言ってガハハと笑う。
「私も同じ理由で【壊れない身体】と【尽きない弾薬】ですからね。壊れないのは良いですが機械部分の充電が尽きるところでした」
イプシロンはブラックだった。身体にはあまり必要ないが本能的な欲求と脳に対してのリラックス効果があるのだとか。
「僕は大気圏内では元の大きさになるのに制限があるのですがそれをなくしていただきました。【活動限界解除】と一日一回の制限をなくす【回数解除】です」
イエラキは猫舌なのか氷を入れたアイスコーヒーを希望した。大きい状態では大気圏の突入も可能であるがゆえのペナルティなのだろうか。
「アタシも【無限魔力】と【効果増大】をお願いしたんだけどステッキが負荷に耐え切れなかったみたいなのよねー。ホント災難だわ」
伝説のなんとかウルフもかくや、という超絶魔術の能力もステッキがなければポンコツである。
「今……」
「クリームパン食べるか?」
「ぃやっほーー」
とはいえ膨大な魔力のお蔭か通常の魔法レベルであれば使用できるというのだから大したものである。
「あと【カーゴに必要なものを満載】って言ったんだけど、空のままなんだよな」
すこしションボリしながらコーヘイ。
「はははは。願いが大雑把すぎたんだろうさ。【元に戻る】だけでも十分反則みたいなもんだ、気を落とすなよ。さー、俺んじゃないが、もう一杯飲め飲め!」
取り急ぎ、便宜上のリーダーをオーガスト、サポートをイプシロンに。街の復興を巨大化したイエラキと土魔法でゴーレムを生成できるミズキが手伝う、コーヘイは生活面のサポートをしつつ数が増やせるものを調べるという当面の役割分担が決まった。