第15話 【閑話】とあるメイド長の場合 (1/2)

「申し訳ございません。我ら5人全員がすべての監視対象者から補足されてしまいました」

精神的な衝撃には耐性がある方だとキャロラインには自負があった。仮にも魔王国の情報収集から極秘の護衛任務までをこなす特殊部隊『ハーミット』の副長である。それが信頼の厚い副官からの報告を受け、

「何ですって!?」

ここしばらくで一番大きな声を上げてしまったのだ。その声にさらに驚いて自分で口を押えてあたりをキョロキョロ。

廊下を掃き掃除する彼女の傍らで姿を消しながら片膝を付きかしこまる5名の部下たちは精鋭中の精鋭である。隠形魔法では彼らよりも優れた者は大陸でも少数であろうし、ましてやそれを感知できるものがいるなんて。

「オーガスト殿の体温を感知できる能力とイプシロン殿の心臓の音を聞き分ける能力には任務初日で」

さすがに戦闘の世界から来た二人の『ハイテク装備』が相手では仕方がない。

「イエラキ殿の神の奇跡に照らされると隠形効果がなくなり、ミズキ殿は常に絶対魔法防御結界を展開されていまして強制的に魔法効果が解除され隠れていたことすらなかったことになっております」

神の奇跡と強力な魔術も残念ながら認めなくては。しかし……。

「こ、コーヘイ殿は? あの方にはそういう能力はないと報告を受けていますが?」

「『なんかおる』と石を投げつけられました」

もうデタラメである。

「怪我の程度は?」

「身体的なダメージは全くありませんが、その、心理的なダーメージといいますか、私を含め全員が自信を失いかけております」

姿を消したままで申し訳なさそうに青ざめてうなだれる

「分かりました。明日からは一般の衛士と同じ格好で任務にあたってください」

彼女が解散を告げると優秀な部下たちは一礼をして散っていった。