【第二部】その男の身体は、あらゆる音色を体内に引きずり込む

ボーイズラブ 30K Active
著者: 十鳥ゆげ
時間: 9 月 前
まとめ:

【第二部】谷津(やつ)いおいは、インディーズ・バンドのフロントマンであり、中性的な美しい容姿とその強烈なカリスマ性で、「The Blue Print(ザ・ブルー・プリント)」、通称「ブルプリ」を率いる男だ。ファンではないリスナーにですら「いおい様」と呼ばれており、『いおい様カルト』という造語も存在する。いおいには、特殊体質があった。女性は無理だが、男性のミュージシャンと性的関係を持つと、そのアーティストの音楽性を「引きずり出して再現する」ことができるのだ。当初はそれが自分の音楽性の飛躍になると面白がって様々なアーティストと関係を持ったが、ブルプリのギタリスト・神谷(かみや)は、いおい本人に心の底から惚れており、身体の関係ができてから、いおいに言わせるところの「恋人面」をして過保護にしていた。ザ・ブルー・プリントは多くのレコード会社で争奪戦が繰り広げられていたが、いおいは「音楽性のみならず全てセルフ・プロデュース」と条件を出しており、その日も高級ホテルで大手レーベルのオファーを断りその場を辞したところだった。店を出ると、「また蹴ったんだ」と笑う見栄えの良い男が立っていた。「で、これからどっか行くの?」男が問うと、いおいは、「このホテルに部屋を取ってあります」と返したが、男は呆れたように言う。「懲りないねぇ」そう言って笑う彩瀬タケルは、いおいのことなど眼中にない様子だった。【第一部】須賀結斗(すが・ゆうと)は、ベースとヴォーカルを担当するバンド少年だ。高校一年の時に偶然立ち寄ったライブハウスでサポートとして叩いていた同い年のスーパードラマー三津屋アキラに一目惚れしてしまう。高校は別だったが、何かと用事を作って彼の学校へ足繁く通ったり、彼の参加するライブには必ず足を運ぶようになったり、挙げ句三津屋アキラ以外のものでは身体が興奮しないという特殊性癖まで身についてしまった。そして三年が経ち、結斗は三津屋アキラと同じ大学に進学を決める。軽音楽部に三津屋アキラ目当てで入部してみると、そこにはもっと注目を集める天才作曲家(頭は年中さくら組の園児)水沢タクトがいた。三津屋アキラと水沢タクトが組む、という一報を聞いた結斗は、どうしたら自分が入れるだろうか、と思案しまくるものの、具体案は全く出ない。そんな折、「小柄なのに五弦ベースなんだな」と声をかけられる。顔を上げると、それは他ならぬ三津屋アキラであった。「リズム隊同士、親交深めに話さね?」断る理由がどこにある、と結斗はついていくのだが、校舎の半地下にある一室に入った結斗を、三津屋アキラはあっという間に両手首を掴んで壁に押しつけ、身動きが取れない状態にして言った。「つーかまーえた」…続きを読む

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