第5話 芋聖女、街に行く (1/2)
冷たい空気が温まっていた体を冷やしていく。
雪の中を掻き分けてやっと街が見えてきた。
見つかるといけない思い、雪の上を全力で駆け回るとは思いもしなかった。
「ここがこの領地の街か」
雪が積もった街はどこか異国感漂う街並みをしていた。
海外旅行にきた気分で周囲を見渡していると、突然目の前で子どもが倒れてきた。
「うぇーん……」
怪我をしたのだろうか。
私はゆっくりとしゃがんで彼女を立たせる。
「大丈夫だった?」
雪がクッションの代わりになって怪我をせずに済んだのだろう。
念の為に魔法をかけて傷にならないようにする。
「おい、逃げるぞ!」
突然聞こえた声に少女は反応して、その場から走って逃げていく。
慌ただしい元気いっぱいな子が住む街なんだろうか。
「お姉さん、お金を取られていないかい?」
そんなことを思っていたら、痩せ細った女性が声をかけてきた。
「お金は持ってきていないので大丈夫ですよ」
「ならよかった。あいつらはスリを平気でするやつだからね」
そう言って女性も両手を前に出してきた。
これは何をして欲しいって合図なんだろうか。
「教えてやったんだから、金目のものをくれ!」
ああ、いわゆる物乞いってやつなんだろう。
特にお金になるものを持ってきていない。
あるのは寒さ対策に着ているコートだけだ。