第12話 ただいまと家族会議 (1/2)

「ただいま」

屋敷の門番に小声で話し、中へと案内してもらう。 今回の帰郷はについては伝えていないが、外で兵が待機している以上はルクス・アズライトとして訪問している形となっており、門番も空気を読んでくれている。

「では、こちらの応接室でお待ち下さい。ご主人様をお呼び致します」

「ありがとう。可能であれば母さんもイルミナも連れてきて欲しい。大事な話があるんだ。あと、姫様もいると伝えてくれ」

「かしこまりました。お待ち下さいませ」

イルミナは妹だ。姫と同い年で仲が良い……と思っているが、実が仲が悪かったらどうしようかと不安なのは内緒だ。

今は春季休暇のはずで、来週あたりから学校が始まるんだったかな。

「この休みの間は遊べんかったからのう。長期休暇中に友人の家に行くのは憧れておったのじゃ」

護衛いに死者が出ていたら不謹慎だが、そうではなし、これから話す内容は明るくないからどう反応したものか困った。 とりあえず、頭を撫でておいた。

「むう。ラズルくらいじゃぞ。父上や母上以外に妾の頭を撫でるのは」

「妹みたいなものですからね。嫌ですか?」

「嫌ではない。意地悪は良くないのじゃぞ」

姫と和んでいると、人の気配が近付いてきた。 はぁ、暗い話をしないといけないのは辛いな。

そのうちに、応接室に父と母と妹が入ってきた。 妹は口だけ動かして、嬉しそうに手を振ってきた。 (お兄様、イザベラ) と、言っているのだろう。 本当の所はわからんが、口の動きを見る限り、多分な。

そして、当主として、父さんが挨拶をする。

「これはこれはイザベラ様、お久しゅうございます。十分なおもてなしが出来ず申し訳ございません。ラズルも久しいな」

「連絡もせずにいきなり訪問しては仕方ない。むしろすまんのう」

姫は王皇貴族にしては珍しく、人の気持ちや都合を気にしてくれて、傲慢さが無い。 喋り方はあれだが、気持ちの良い性格だ。

「父さん、大事な話があるんだ。まずは兵達を休ませたい。宿を手配出来ないか? あとは明日の一◯時頃に集まるようにと」

「うむ。わかった。家の者に案内させよう」

「私が伝えて来ますわ」

イルミナが少しだけ席を外して、すぐに戻ってきた。

「さて、姫様もいらっしゃって大事な話とは何があったのか」

「ああ、姫様は成り行きだ。俺の用事があって、こっちに向かっている途中に百人くらいの集団に襲われているを発見して、撃退した上で保護した。事情があって、王都ではなくこちらに来て貰ったんだ」

「ぬ? 妾はそこまで聞いておらんがの。まぁ、王都ではなくこちらに参るというのは違和感があったが、考えがあることだとは思っておったのじゃぞ。その幼くなった容貌と関係するのかえ?」

「それも話します。その前に……、姫様を狙った連中について、全体的に黒とか灰色で固められた格好をしていたのだご、父さんは何かわかるか?」

「ここ数日で王国内で度々目撃されている連中だろう。ただ、そこまでの人数ではなかったと聞いている。捕まる前に自害するので、生きたまま捕獲することが出来ぬようだ。奴らはクリフォト教ではないかと噂されている」

クリフォト帝国の国教だった悪魔信仰の宗教か。あるのは聞いたことがあるが、本当にあったのか……。都市伝説かと思っていた。 そして何故この時期に出てくるのか……。

「この件については、近隣諸国を含め生存を最優先の上で捕獲するという方針だ。お前は騎士団長というくらいだから、何か知っているのではないか?」

俺が身体を奪われてからの話か……? 少なくとも、俺は知らない。

「父さん、その事なんだが……。俺はもうアルカナ王国の中将でもなければ将軍でもないし、騎士団長でもないんだ」

えっ!? という反応を姫と妹はして、母さんは心配そうにしており、父さんは冷静を装っているが、内心驚いているのだろう。

「更に言えば、この身体も母さんが産んでくれたラズル・ラピス・ティファレントのものではないんだ」

「で、でも……、その姿は紛れもなくお兄様ですわ! 少し幼く見えますが、見間違えるわけがありません!」

ここまでずっと黙っていた母が口を開く。

「その身体はホムンクルスね。生命の流れが人とは違うもの。貴方が育てていたのにも驚いたけど、まさか自分が使うためとはね……。長く持たないことは分かっているの? その身体は数年しか持たないわよ。」

あぁ、やはり母さんにはわかるんだな。