浮気。 (1/2)

「ごめんちょっと浮気する」

「ぐすん、しょっく…………」

茶番を繰り広げるのはダンジョン五層の草原地帯。

五層ずつダンジョンは姿を変えるらしく、そしてその境目では前の特徴と後の特徴が入り乱れるらしい。

六層以降は草原地帯らしく、五層では森系と草原が半々くらいのフィールドになってるらしい。

四層でたっぷりと釣りを楽しんだ俺達は速攻で六層に行こうとしたのだが、その五層にある草原で無視出来ない存在を確認してしまったのだ。

それは何かと言うと、牛である。

そう、牛である。

種類で言うとバイソンとかその類になるのだろうが、エルンに聞けばかなりの高級食材であり、みみっちい量の串焼きでも銅貨五枚はくだらないとか。

ああ、初日に見た串焼きってそれか。

俺は魚が好きだ。そして陸より海が好きである。でもそれは牛肉が嫌いと言うことにはならない。牛の肉も普通に好物である。

「乱獲しよう」

「牛に、旦那様を寝盗られた。よよよ…………」

「寝てねぇし取られてねぇ。ポロは世界で一番美味しいよ」

「…………ぽっ」

茶番は置いといて、俺は眷属に命じた。多分初めて強く命令した。

「狩り尽くせ」

手持ちで戦える精霊は全て投入した。五層に出るモンスターだけあって普通に超強いのだろうが、実在と非実在を行き来して攻撃を躱す幽霊みたいな存在に群がられた牛は悲惨だった。

「…………毛長牛がこんなにあっさりです」

「はっはっはっはっ! 牛肉祭りじゃぁあ!」

精密使役で丁寧に狩らせる。牛が強過ぎてソードキャットの胸びれソードが弾かれても、眷属強化をフルブッパして無理やり動脈を切らせる。

サーペントも首を噛み千切って、スカーレットのブレスも首に掠るように撃たせてとにかく血抜きを兼ねた殺し方を徹底させる。

「ピーちゃんさん! やっちゃってください!」

狩られて血が抜けた牛を片っ端からピーちゃんが冷やしてくれる。血を抜いて身を冷やす。これが出来てれば後はどうにでもなるから。