似て非なる物。 (1/2)

五層まで帰ってきた俺達は、そこの安全地帯でエルンに料理を教える事に。

ちなみに安全地帯と言うが完全なセーフティエリアって意味じゃなく、一層や二層でもあった階段近くのテント村的な場所のことである。

単純に、戦闘員が身を寄せ集めてる場所は他と比べて安全だと言う意味での『安全地帯』なのだ。

「よし、んじゃ今日は『カルパッチョ』と『マリネ』を作ろうか」

「かるぱ………、まりね? です?」

「カイト、それは、どのくらい美味しい?」

「3カイトくらいの旨さだ」

「カイト三人分の、美味しさッッ……!?」

ポロを軽くいなしながら準備をする。五層の<ruby><rb>安全地帯</rb><rp>(</rp><rt>キャンプ場</rt><rp>)</rp></ruby>の空いた場所にグランプを止めて、アウトリガーを使って車体を固定。

その後、グランプの前にテーブルや焚き火台などのキャンプギアを設営していく。なんでグランプのキッチンでやらないのかと言えば、グランプはグランピングをするキャンピングカーって意味であり、グランピングとはグラマラス・キャンピングの事だからだ。

グラマラスとは言えキャンプなのだ。いくら設備が充実していようと、天候に不備が無いなら料理の一つくらいは屋外で作ってこそのキャンプだろう。俺は別にキャンプのガチ勢って訳じゃないが、どうせやるならその手のポリシーは大事にして行きたい。

さて、準備が終わったので食材の用意だ。

「エルンに教える訳だから、この都市で手に入る材料で作れなきゃ意味が無いよな。だから主材はこの<ruby><rb>迷宮鱒</rb><rp>(</rp><rt>サーモン</rt><rp>)</rp></ruby>を使ったマリネとカルパッチョだ」

「カイト、質問」

インベントリから箱を召喚してサーモンをデンっと取り出すと、そこでポロが手を挙げた。

「動画でたまに見る。けど、カルパッチョとマリネ、何が違う?」

「ポロ、良い質問だ」

カルパッチョとマリネ。日本でも料理をあまり得手としない人間は混同しがちなこの二つだが、実は明確に違う料理だったりする。

実際、この二つを混同してしまうのも仕方無い理由も分かる。なぜならマリネ液とカルパッチョ液はレシピがほぼ一緒なのだ。

どっちの料理もオリーブオイルにレモン果汁(もしくは酢)、塩コショウと砂糖。この四つを混ぜた物がベースとなる。その作り方は独自のアレンジや分量に違いがあったとしても原型となる四つの材料は一致してる。

そして使う主材もやっぱり、どちらもサーモンとタマネギを使った物が一有名だろうか。本当は牛肉使った物がメジャーだったりするけど今は割愛する。

同じ材料を同じ調味液で似たような料理にするなら、やっぱりそれは混同されても仕方無い。

だが知っておいて欲しいのは、マリネとカルパッチョはあそこまで似てる料理なのに、生まれた国が違うのだ。

マリネはフランス生まれ。カルパッチョはイタリア生まれ。この二つは双子かってくらい似てるが、実は国籍さえ違う赤の他人。

なんて事をつらつらとポロに語るが、地球の存在がよく分からないエルンはずっと首を傾げてる。

「まぁ、作り方が似てるから一緒に作ると楽だよって事だけ覚えてくれ」

「わ、分かりましたですぅ!」

「じゃぁまずは、調味液から作るぞ。どっちも同じの使うから、ここで二つの料理に使える分だけ作っちまう」