第86話 強請り (1/1)
桃代のプラン表はビリビリに破かれて、ゴミ箱に埋もれた。今後、発掘される事はないだろう。桃代は何か言いたげにしているが、そもそもパスポートを持ってない俺は、出国できない。エジプトへ行けない。
明日の事を考えて
「桃代さん、今日の予定はどうします? 何か用事があるんなら付き合いますよ」「う~~っ、紋ちゃんの
「ねぇ、紋次郎君、あれってヤバくないの。桃代姉さん、ぶっ飛び過ぎて大気圏を飛び出してるよ。呼吸困難になっちゃうよ」「いいか桜子、そこではない。桃代さん、ほどほどにしないと桜子が困ってますよ。おまえは
「えへへ、今のは冗談よ。さてと予定なんだけど、今日も暑いから今度は桜子と三人で水遊びでもしようか」「いいのか? 台風が近づいてるから、風が結構強いと思うぜ」
「大丈夫でしょう。木や崖が風よけになってくれるからね。そういう事で、紋ちゃんは水着を買ってきなさい。桜子は水着を持って来てるでしょう」「あっはい、桃代姉さんに言われた通り待って来ました。でも、わたしは泳げないんですよ」
「そんなに深くないから大丈夫よ。でもまぁ、心配だったらキュウリを持って遊びなさい。そうしたら溺れた時に河童が助けてくれるから」「アハハ、そうします・・・・・ねぇ紋次郎君、今のは
「あのな桜子、諦めろ。桃代の変なところは諦めろ。もしも溺れたら俺が助けてやる」「本当? お願いね紋次郎君」
そういう事なので、俺は急いで海パンを買いに行く。以前、シャツとデニムを買った衣料品店に行くと、桃代と手を繋いで歩いていたのを見られたのだろう、俺の正体が噂になっていた。
「お客さんこの前、真貝の桃代様と仲良く歩いていましたが、あなたはどちらさんなんです?」「あ~やっぱりそうなるよな。あのですね俺は真貝紋次郎、訳あって今は真貝の本家に住んでます」
「そうですか、ではあなたが紋次郎さんで桃代様のお相手。いや~羨ましいですな~あんな美人?が嫁さんで」「おじさん、微妙に
俺は商品を選び代金を払うと、さっさと店を出て行く。噂話を聞くのはいいが、自分が噂話のタネになるのはまっぴら御免。ついでに駄菓子屋に寄り、俺の大好きなチョコを買う俺と食い物の趣味が合う、龍神にも食わせてやりたいところだが、ヤツがいない今は、独り占めするつもりだ。
チョコが溶けないように急いで帰り冷蔵庫にしまうと、居間では桃代と桜子が水着に着替えていた。俺は見なかった事にして自分の部屋で着替えると、二人を待つ事にした。しばらくすると
「紋ちゃん、さっき台所から見たでしょう。もう、気を付けないとダメだよ。桜子には内緒にしてあげるから、
「あ~っやっぱり、あの時の冷蔵庫が開く音は、紋次郎君だったんだ。いいよ別に、後ろ姿しか見えなかった
「あうっ、ずびばぜん。
「なによっ桜子、あなたはどっちの味方なの! こういう時は無条件でわたしの味方をしなさいよ」「あ、あっ、そうですね、すみません。紋次郎君、着替えを覗いた罰として桃代姉さんの言う事を何でも聞きなさい」
「いいか桜子、おまえまで調子に乗ってると、
「なあに桜子、まだわたしに報告してない事があるの? ちゃんと報告しないとダメじゃない」「行くぞ桃代、あまり桜子を困らせるな。元はと言えばおまえが原因だ」
桜子のヤツ、余程世話になったのだろう桃代に服従し過ぎだ。桃代が他の人に無茶を言わないよう、なるべくヤツの言う事は、俺が聞いてやらないとイケない。