第32話 中学二年編12 夏の日 (1/2)
投稿日、一日間違えました……orz月曜だと思ったら……!なので一日遅れです。
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「暑いぃ……」
夏休みも近くなった、期末テスト明けのその日。 神様と、エアコンのない部室の暑さに参っていた。
「エアコンがないからのう、ここ……」
……神様でも暑いんですかね?
「……依代があるせいで、暑さ寒さも感じてしまうからのう……」
部室は、地学準備室。十名以下の小さい部活なら、こういうところが割り当てられるのだが、こういう準備室にエアコンが入るのは珍しい。 入っているのは、気温の変化で薬品が反応してしまう可能性がある化学準備室と、水槽の水温管理の必要な生物準備室ぐらいで、次に工事が入るのは、楽器がある音楽準備室だそうだ。
……そんなこともあって、窓を開けていても、時折風は入るが、熱風だ。 もう少し環境を調整できる場所に移りたい……
「……半神界に、快適なとこ、ないんですか?」「……あるにはあるが……制限がある」「制限?」「一日一時間限定じゃ」「……なんでまた」「……快適すぎて、そこから出たくなくなるからじゃ」「……何でもいいから、そこ行きましょう」「……仕方ないのう」
……神様に連れられて、やってきました半神界・快適エリア!
「おおー、さっきと違って快適……!」
夕暮れのような、薄暗いオレンジの世界。 気温は寒くもなく暑くもなく、不快な湿気もない。 鍛錬で使った場所と同じで何もないが、すごく落ち着く。
「はぁー……」
床に寝転ぶと、程よい柔らかさがあり、身体がものすごくフィットする。 人をダメにするクッションみたい……
ふと横を見れば、高峯様も地面に大の字でだらーんと脱力している。
……あー、これはダメになるー…… ……何も……考えたくない……。
…………
……
ドスンッ!
「痛った!」
……なぜか、部室の床に放り出されていた。
「……もう一時間経ったか」
……高峯様が、けだるそうな体で立ち上がる。
え、一時間経つと戻されんの? こっちでは……数秒しか経ってないのに?
……くっそ暑い……さっきとは大違いだ!
「……今日はもうダメじゃぞ」
……本当に一時間いたんですか?
「快適すぎて時間を忘れるからの」
……なんか、ものすごいリラックスはしたけど…… 一瞬で帰されたみたいにしか感じないよ!
「仕方なかろう。あの世界は時間が吹っ飛ばされると有名じゃからの」
……「世界」なのに時間が吹っ飛ばされるとか……新手のスタンドの仕業か!
「元々、上の神がイヤなことを忘れようと思って創った世界じゃ。 しかしあまりに快適すぎて、二百年ぐらい帰って来んかった。 そのせいで神界が大混乱に陥った」
二百年……時間忘れるにしても程があるわ。
「それで使用制限がつけられた。時間が過ぎたら、世界から強制的に放り出されるようになっとる」
……高峯様は一時間?
「……わしらのような下っ端土地神ではそのくらいじゃな。お主らも同じじゃ」
……一時間じゃ足りないです!
「そうは言っても、入れねばどうしようもあるまい」
……くっそう! お預け食らった犬の気分……!
「そういえば……プール開放日があったんではなかったかの」
あー、三日に一回ぐらい? でもあれ予約制なんですよね…… プールは基本的に、半分は水泳部が使ってるんで、それを邪魔しないようにって。 予約入れようと思ったら、七月と八月上旬はもうがっつり埋まってて……
「ここも奪い合いか……いっそ海にでも行った方がいいかのー」
海かー……この際、冷えるなら私は魚になりたい……。
「魚は魚で大変じゃぞ。温暖化で水温上がりすぎると、すぐ死ぬからの。 人間以上に温度変化に弱いんじゃぞ」
……あー、そういや、人間が掴むとそれだけで火傷するとか?
「そうじゃの。魚の体温は水温と同じじゃから、渓流のイワナやヤマメとか、北の海の魚とか、十度前後の水温じゃないと生きられんしの。 人間の体温で触られるのは、人間なら五十度以上の熱々な手で掴まれるようなもんじゃな」
五十度って……結構熱いですよね?
「料理でも十分火が通る温度じゃからの。魚からしたら、それくらいの感覚じゃ」
はあ……てことは、人間がイフリートに握られるような感じ?
「炎の精霊か……そこまでではないかもしれんが、イフリートが鉄の扉の向こうで待っている、みたいな感じかの」
十分熱そう……熱気だけは伝わってきて、「あ、この扉の向こう絶対罠やん」って解るやつ。
「まぁ人間も、イフリートやらドラゴンやらに握られたら死ぬじゃろ?」
……まあ、多分死にますね。熱とかじゃなくて、力加減的なところでも。
「竜も、あれだけの身体で炎竜とかだったら、体温もかなり高そうじゃしの。 人間が握られたら、それで焼き肉になりそうじゃ」
……握られる前にブッ殺しといて良かったー!!
「お主はお主で物騒よの……」
いやいや、炎竜の奴だって、ファイヤーブレスごんごん吐いてきやがりましたからね? 「握り焼き肉」にはされなくても、炙り肉にされるとこでしたし。
「焼き肉というより、消し炭にされそうじゃの……」
人間なら、ブレス一発で百人ぐらい一気に消し炭ですわ。
「ふむ……となると、巨人なんかも体温高そうじゃの」
巨人? ……あー、そういや肩に乗ったとき、ちょっと熱かった気が……
「乗ったことあるのか……」
ちょいと対魔族戦で共闘してましてね? 肩に乗って「薙ぎ払えー!」みたいな感じで。 魔族の町に殴り込みですよ。 文字通り、町殴って木っ端微塵の分解バラバラーで。