第3話 驚愕のネイサン&ライラ (1/2)

北の塔に幽閉されて既に一週間が経っている。

運ばれて来る食事は一日二回。

いつも代わり映えのしない質素なものだが、その横には必ず新鮮な果物や甘いお菓子が添えられている。

騎士が食事を運んできた時、怪我や病気の相談を受ける事がありその時々で必要な薬を作ってこっそり渡しているので、そのお礼なのだろうと思っている。

それ以外の時間もミリアはとても快適に過ごしていた。 以前、ウォーカーからプレゼントされたアイテムバックには沢山の本や資料が入っている。

ライトをつけて、時間がなくて読めなかった本を読み資料を纏め新しい薬の製法を研究し・・。

(そろそろ殿下が来る頃だと思うのよね)

ミリアの記憶では五日後には陛下が戻られるので、それ迄にミリアに薬を作らせたいとネイサンは考えるだろうと予想している。

翌日の昼前に階段を登る足音が聞こえて来た。

(あっ、来たみたい)

大急ぎで本と資料を片付けた。

ドアが大きく開くと予想通り部屋に入ってきたネイサンに、立ち上がったミリアはニッコリと微笑みを浮かべ挨拶をした。

「ようこそおいで下さいました」

「嫌味か?」

(はい、その通り嫌味でございます)

「何故薬を作らん?」

「楽しんで頂けておりますでしょうか?」

ネイサンがミリアの前にある机を蹴り飛ばした。

「貴様、絞首刑になってもいいのか? それとも毒杯か?」

ちょこんと首を傾げたミリアは、「毒でしたら、とても弱い神経毒の薬が昨夜のスープに入っておりました」

「その割には元気ではないか」

「お陰様でこの通りでございます」

「薬を作れ! そうすれば自由になるのだぞ」

「おかしな事を仰せられます。私は薬に毒を盛ったと言われここに幽閉されました。それなのに薬を作れと言われるのでしょうか?」

「ぐっ! 屁理屈を申すな。兎に角急ぎ薬を作るんだ!」

「お断りいたします!」

初めてミリアが強い口調で返答した。

「いいか、必ず今日中に薬を作れ。でなければただではおかん。鞭打ちは痛いだろうなぁ。拷問というのは色々種類があるそうだ」

(拷問? そんな事させる訳ないじゃん。そうなったらさっさと逃げ出すわ)

ミリアは国王が帰って来るのを待っていた。ネイサンの愚かな行動を聞いた国王がどの様な判断を下すのか。

それによってこの国を見限るかどうかを決めたいと思っていた。

(予想はついてるけど、一応確認しておきたいしね)

「貴様のような奴でも大事な人がいるだろう? そいつらに何かあればどうする?」

「どう言う意味でしょうか?」