第306話 空を飛ぶ雲 (1/2)
ごくり。
識の魔法の適正者。スクナの目はもうなくなっている。ウエモンだったらちょっとやっかいだ。ハルミがアレだったから、ミヨシの可能性は濃厚だろう。案外ユウコだったりしてな。それとも超意外を狙ってシャイン嫁とか。それだと俺までぼこぼこにされないか心配だ。
「どうしてお主の予想は女の子ばっかりなノだ?」「うん、願望が入ってしまったな」「分かる気がするノだ」「作者の」「作者ノか!?」
「で、誰なんだ。その適性を持つ人というのは」「うむ。松たか子さんじゃ」「「「………だ、誰?」」」
「ワシ、ファンなのじゃ」「聞いてないわっ!!!!」
「あの人、識の魔法使いなノか?」「お前も真面目に質問してんじゃねぇ!!」
「ワシ、大ファンなのじゃ?」「大事でもないこと2回言うな!」
「大がついたのと?マークの分だけちょっと違ったノだ」「そういう問題じゃねぇよ。どこまでボケるつもりだよ」
「そんな怒らんでも良いであろう、この話はもともとそんな感じだったではないか」「ギャグを入れさえすれば、なんでも許されるという風潮止めろ! 受けるかどうかも大事だぞ! いいから話の続きを言え。この国を乗っ取られたいのか!」
「この国で、ワシに命令口調で話せるのは、お主ぐらいのものじゃ。そのことに感謝してアチラじゃよもらいたいものだが、まったくお主ときたら」「この国を救ってやったことのお礼でそのぐらい我慢……なんだって?」
「ん? そんな威張りんぼでは、おにゃの子にモテないぞと」「そんなこと言ってないだろ! いま、サラッと固有名詞が出てきたぞ?」「プロで初勝利おめでとうキャンペーン中なノだ」
「その阿知羅じゃねぇ……え? アチラ? アチラなのか?」「そう言っておるであろう」「ややこしい言い方しやがって」
(注:これ、本当にただの偶然ですからね。阿知羅投手、プロ初勝利おめでとうございます)
そうか、アチラか。アチラならこの魔法を受けてくれるだろう。キャラも受けだけに、いやそれはどうでもいい。
「それならさっそく伝授してもらおう。オウミ、アチラをここに連れてきてくれないか」「分かったノだ。だがスクナとアルファはどうするノだ?」
「アルファは知らねぇよ。スクナはもう少し考えて……アマチャン、スクナはしばらく保留で良いよな?」「ああ、かまわん。いつでも本人の都合に合わせて、ここに来るが良い」
「じゃあ、アチラだけ連れてきてくれ」「ホイ、ノだ」
「連れてきたノだ」「うん、いつも通り、展開が早いな。アチラ、大事な用件があるんだ」
「びっくりしましたよ、いきなりイズモに来いだなんて。それで僕になんの用事でしょうか? もうめっき液を嘗めるだけで、不純物の濃度まで当てられるようになりましたよ?」
「いや、そんな能力はいら……すごいなおい!?」「これもミノウ様のおかげです」「ミノウの?」
「ええ。めっき品にどれだけ不純物が混じっているかを、ときどき検査してもらってます。その結果と、めっき液を嘗めたときの味とを照らし合わせているうちに、だんだんとそういう能力が」
「分かった。すごく気の毒だからそれはもう止めたほうがいい。それより今回の話だが」「はい?」「識の魔法使いになって欲しいんだ」
「はい……はい? 僕が識の魔法?」「識の魔法は分かるか?」「ええ、知識としては知ってます。学校で習いました。たしかものすごくレアな属性で錬金術師への道が……って僕がっ?!!!」
ようやく現実が把握できたようである。