第312話 魔王報告会 (1/2)

ユウという人間がオオクニを部下にしたということは、オオクニの下の組織に属する俺たちは、いったいどういう立場になるのだろうか。

それがイセの杞憂である。ただでさえクマノ国との交戦で大変なときに、これ以上ややこしい問題を起こさないでもらいたいものである。

7名の魔王は、アメノミナカヌシノミコトの直接指名で領地に君臨している。それは役立たずだった旧領主と交代、という位置づけである。

格式としては、オオクニの配下である他国の領主たち(ハクサン家やシャチ家など)と、ほぼ同格といって良いであろう。

納税の義務がない(ミノウは例外)ことや、オオクニから直接指示をされることはないという魔王特権はあるものの、オオクニよりも格下の地位であることは言をまたない。

そのオオクニに上司ができたというのだ。魔王とて、平静でいられるはずは。

「ふわふわほよよん、ほーんほん」

「平静だな、お前だけは!!」「な、なんなノだ? 急にツッコむでないノだ。びっくりするであろうが」「のんきに雲なんかに乗りやがって」「これはふわふわなノだ。ふわんふわん」

こっちがどれだけ大変な思いで領地運営をしているのか知っているのか、と言おうとしたが、それはただの愚痴に過ぎないと思い直し、イセはそこで自重した。それはこいつだって同じはずだ。

「オウミ、それはどうやって作ったゾヨ。また、新しい呪文でも発見したのか。それなら我にも教えて欲しいゾヨ」「あ、それな。我もまだ詳しく聞いてないヨ。教えてくれヨ」

「これの元は、あの水晶なノだ」「水晶って、ホシミヤにいたネコウサのか?」「そうなノだ。あのとき、我らでいろいろ作ったではないか。あのときの創作物が元になっているノだ」

「あのときって、オウミが魔王の杖を作ったときのことだよゾヨ?」「そう、それそれ。それを識の魔法使いとなったアチラに渡したら、これができたノだ」

渡したのではなく、ユウに取り上げられたのだけど。

「それだけかゾヨ?」「それだけなノだ」「お主が作ったわけじゃないのかヨ」

「我の作った魔王の杖が元なノだ。だから我が作ったも同然なノだ」「あれかぁ。ん? ということは、我の勾玉もアチラに魔力を入れてもらえば、そうなるということゾヨ?」

「おそらくはなると思うノだ。ミノウの自転車だって……あっ」「そ、そんなことになっていたのかヨ……orz」

「ようし、帰ったらさっそく我もふわふわを作ってもらおう。アチラに頼めば良いゾヨ?」「ユウに話を通す必要があるノだ。これもユウが権利を持っているノだ」

「そうか。面白半分で勾玉を作ってはみたものの、よく考えると使い道がまるでなかったゾヨ。持て余しておったゾヨ。ふわふわなら毎日使えるゾヨ、わくわくわくゾヨ」

「orz」「ミノウ、イキロ」「そんなこととはつゆ知らず、自転車をスクナにやってしまった我なんか死んでしまえ orz」「だからイキロって」

「また作ればいいノだ」「また作るといっても、もうあの原料はタダではないのだヨ。あのときはふんだんにあると思って、37個も使って作ったヨ。それを時価で買うとなったらどれだけの費用が……orz」

「1個百万とか、ユウは言ってたようだったゾヨ」「水晶を37個も使ったノか!? 我は23個なノだ。お前は使いすぎ、というかそんなに魔力を使ったノか」「お前らすごいな。ワシは17個が限度だったゾヨ。ところで、そのふわふわは使った水晶の数は関係あるゾヨ?」

「まったく分からんノだ。その辺はユウに聞いて欲しいノだ」「それもそうだった。オウミに分かるはずはないゾヨ。帰ったら聞いてみよう」「イズナはいいヨ。まだ可能性は高いから。だけど我はもう(´・ω・`)ダメヨ」

「自転車をスクナに返してもらうとか?」「そ、それだけはできんヨ。一度やると言ってしまったものを返せとか、魔王のキンコラカンケンに関わるヨ」「おかしなものに関わるやつなノだ」「もしかして、それは沽券に関わるではないかゾヨ?」

「そろそろ時間だ。お前らもわけの分からん話をしてないで、そろそろ会議を始めよう。遅刻したヤマトは後回しにするやん」「ヤマトはほんとうに来るのか?」