第3話『パートナー選び』 (1/2)

魔物に家畜が襲われている村に到着したウォルター達は、早速村長の家に向かいました。

「こ、国王様⁉︎ どうして、このような場所に⁉︎」

王様を見た瞬間に、七十歳前後の年老い村長が、慌てて椅子から立ち上がって、床に平伏しました。 冒険者がやって来たと聞いたのに、やって来たのは国王様でした。

「構わん構わん。今のワシは冒険者のフィデルさんだ。普通に接してくれ」「はっ、はぁ……では、そちらの三人のお方は護衛の方ですか?」「いや、ワシの娘で第一王女のディアナ。他国の第三王子のウォルターさん。他一名じゃ」「ハッ、ハハァッー! これは失礼いたしました!」

護衛ではなく、王女と王子です。村長は深く深く頭を下げて、無礼を謝罪しました。 他一名の素性が少し気になっていますが、勝手に偉い人だと勘違いしています。 村長はもう、恐れ多くて床から立ち上がる事が出来ません。 床に座ったまま話をする事にしました。

「あれは——」

村の羊が襲われ始めたのは、一ヶ月程前からです。 最初は一度に一頭だけだった被害も、今では一度に三頭になりました。 味を<ruby><rb>占</rb><rp>(</rp><rt>し</rt><rp>)</rp></ruby>めた魔物が村の近くに増えたのか、子供だった魔物が成長して胃袋が大きくなったのか。 理由はまだハッキリとしてませんが、仕掛けた罠を回避して、羊を喰い殺され続けています。

「——という訳で、<ruby><rb>大事</rb><rp>(</rp><rt>おおごと</rt><rp>)</rp></ruby>になる前に冒険者を数名雇って調査してもらったんですが、まったく魔物の影も形も見つからないのです」「なるほどの。知能の高い魔物という訳か……ウォルター君、ちょっと村の周囲を調べてもらっていいかの?」

国王はウォルターに魔物の探査をお願いしました。 でも、そんなのは村に到着する前からやっていました。 ウォルターは国王の質問に即答しました。

「もう終わっています。村の北東七キロ先に三匹います」「そうかそうか。では、早速魔物退治に出掛けるとしようか」「こ、国王様? 一体何を言っているんですか? 魔物の居場所が分かるんですか?」

ウォルター達は村に到着したばかりで、調べる時間なんてなかったはずです。 そんな事が出来るはずがないと村長は聞きました。けれども、それが出来るのです。

「当たり前じゃろう。遊びに来たんじゃないんだぞ。ワシに任せておきなさい」「おおぅ! ありがとうございます、国王様! いえ、フィデル様!」「構わん。王として民の暮らしを守るのは当然の義務じゃ」

あんたは何もしないだろう、とウォルターは心の中で思っていますが、こういうのはチームプレイです。 王様は威張るのが仕事です。村人達の信頼と協力を集めてくれれば、それで十分です。

「それじゃあ、村長。村人には今日からは、枕を高くして眠ってもいいと伝えておくんだぞ」「はい、フィデル様。ありがとうございます」

これ以上、冷たい床に村長を座らせるのは気の毒です。 なので、さっさと村長の家から出ました。作戦会議が必要です。

「僕が一人でパパッと泳いで倒しに行きましょうか? その方が早いですから」「そうですね。兄様が一人で行った方が早いですからね」「うんうん。ウォルター君になら、安心して任せられる」

まあ、当然、こういう流れになります。 でも、この流れに賛成できない人もいます。