世界はどうにも、息苦しい、生き苦しい。

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最新: 第7話
時間: 9 月 前
まとめ:

近頃、似たような事件が報道を賑わせている。『通勤時間帯の電車で、ピエロの仮面を付けた男が薬品を撒く』そんな記事がニュースサイトのトップに出ている。無敵の人だの、ジョーカーだのこういう奴らが暴れるせいで、僕みたいな人間はますます肩身が狭くなる。コメント欄も随分と燃え上がっている。『またジョーカー出たwww』『イキって0キルは草』『厨二病が治らなかった末期患者の成れの果て』『〜無職童貞ジジイだけど失う物何もないので通勤時間帯の電車で無双します〜これもうなろうだろ』『失うもんない奴は怖いねえ』三十代を意識した時、マインドが突然に切り替わった気がした。もうこういう事件の典型的な犯人像を笑っていられない。人生なんて決定論的未来の一本道しかない。僕は僕みたいな人間が歩むべき無惨なレールの上を着実に進んで、そして誰にも知られず死んでいくのだ。我々の人生だって、越冬出来ない虫と変わりない。盛りを過ぎた後は静かに死を待つだけだ。何も成せぬままに死んでしまうのは恐ろしい。命そのものの存続よりも、奇跡的な確率で与えられた一度きりしか無いそれを、無意味なままに喪失してしまう事があまりに惜しい。何かをこの世界に残して死にたいと思う、自分だけが夏の終わった季節に取り残されて死んでいくのは不公平だと思う。そんな気持ちが理解できてしまう。生きる意味を得た他の誰か達が、羨ましいし、恨めしい。 三十歳独身。鬱、発達障害、無職、生活保護申請中。社会のお荷物、人間の底辺。そんな風に、呼ばれる僕の。太陽燃える、大人の夏休み。この物語は作者の実体験を元に書かれたフィクションです。登場する人物・団体・事件・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。…続きを読む

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